iPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用した再生医療の研究開発は、現在、心筋再生や神経疾患治療などの難治性疾患への応用を中心に急速に進んでいます。この分野の技術革新に伴い、関連するバイオ企業の動きにも大きな関心が寄せられています。本記事では、iPS細胞を用いた再生医療の最前線で活躍する注目企業をピックアップします。
Heartseed株式会社(未上場)
Heartseedは、慶應義塾大学発のバイオベンチャーで、iPS細胞由来の心筋細胞を用いた心不全治療の開発を進めています。主力製品であるHS-001は、他家iPS細胞から作製した心筋球を患者の心臓に移植することで、心機能の改善を目指す治療法です。2025年2月には、国内第I/II相治験(LAPiS試験)において10例目の投与を完了し、患者組み入れが全て完了したことを発表しました。
また、Heartseedは、免疫抑制剤が不要な自家iPS細胞を用いた心筋再生医療の開発も進めており、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けています。今後の治験結果や事業化の進展に注目が集まります。
住友ファーマ株式会社(4506)
住友ファーマは、京都大学と共同で、iPS細胞から作製した神経細胞を用いたパーキンソン病の治療法を開発しています。これまでに、7人の患者に対してiPS細胞由来の神経細胞を脳に移植する治験を実施し、良好な結果が得られています。2025年度以降に、国への承認申請を行う予定であり、実用化に向けた動きが加速しています。
iPS細胞を活用した神経疾患治療は、従来の治療法では難しかった根本的な改善を目指すものであり、今後の市場拡大が期待されます。
株式会社ニコン(7731)
ニコンは、子会社であるニコン・セル・イノベーションを通じて、iPS細胞由来の心筋細胞・心筋球の製造を受託しています。Heartseedが開発するHS-001の治験用細胞製造を担当しており、再生医療分野での製造技術に強みを持っています。また、商用段階での安定供給に向けた製造体制の構築にも取り組んでいます。
再生医療の実用化が進む中で、ニコンのような製造支援企業の役割はますます重要となっており、今後の成長が期待されます。
投資家へのメッセージ
iPS細胞を活用した再生医療は、難治性疾患への新たな治療法として注目されており、関連企業の研究開発が進展しています。特に、Heartseedのようなバイオベンチャーや、住友ファーマ、ニコンなどの大手企業が取り組むプロジェクトは、今後の医療革新を牽引する可能性があります。投資家としては、これらの企業の動向を注視し、再生医療分野への投資戦略を検討することが重要です。